肉まんを食べたかった話

だんだん外が肌寒くなってきた。 

こう、寒くなってくると食べたくなるのは肉まんだろう。

少しひんやりとする外で食べるほかほかの肉まん。これは最高に幸せな一時である。



肉まんを食べたい。そう思い立ったのは模試終わりの話。いつもより少し早い時刻に予備校から引き上げる。外に出ると思いの外涼しい。

肉まんを探しにコンビニへ。ここでふとファミリーマートで肉まんのセールをやっていたことを思い出す。確か税込みで100円。これは買うしかない。そう思いいつも行っているファミマへ。


売り切れてましたね。見事にからっぽ。そんなにみんな肉まん食いたいのか?

気を取り直して少し離れたところのファミマへ。




見事にSOLD OUTですわ。満員御礼お疲れ様でした。みんなそんなに財布の中まで冷え込んでるの?


ここまでくると引き下がれませんよ。というわけでファミマを探すべくとりあえず歩いてみることに。

大阪市内はだいたいの方角が合ってたらおおよそどこかの駅にたどり着けるようになってるので、一本外れた筋を歩いていくことにした。


うん、迷いましたね。完全に迷った。なんかネオンが光ってる。これラブホ街とか言う奴ですわ。建物が全体的に怪しい。風俗嬢と客が待ち合わせしてたし。

こういうのは僕には良くある話で、過去には神戸で知らぬ間に福原の風俗街に迷い混んだこともあった。気にしない気にしない。

でもラブホの前に掲げてあった「シニア割60歳以上30%Off!!」てのが妙に面白かった。どうしてそこまでしてシニアのカップルを泊まらせたいのか、僕にはまだ早いのだろう。

ちなみにこのホテルのとなりに医学部予備校があったのは何ともいえない立地だなと思った。

幸せの形は人それぞれだ。医者になればそれはたぶん幸せだろうし、60過ぎても夫婦で愛し合えたらそれも幸せだろうし、風俗嬢相手に欲求を満たせてもそれはそれで幸せだろう。僕はとりあえず肉まんを食べて幸せを感じたい。

さてさて、肝心のファミマだ。
今のところコンビニはローソンが一軒だけである。まだまだ駅まで距離もあるしそのうち見つかるだろう。

一応表通りに復帰した。この途中でな
んちゃら教化本部とか言う宗教施設らしき建物に遭遇した。一気にアンダーグラウンドに足を踏み入れた感が増してしまった。


歩き続けるが依然としてファミマは見つからず。15分ほどで見つかったのはローソンローソン一つセブンイレブンを挟んでまたローソンである。ローソンが飽和している。


大通りを歩いているとそのうちに交差点にぶち当たる。交差点なんて普段生きていたら別段気にすることもないのだろうが、なぜか今回の交差点は違った。

今歩いているのは、今まで歩いて来たことのある場所でないはず。なのに明らかに既視感があるのだ。なぜだ?

そんなことを考えつつ交差点の四つ角をそれぞれ見て回る。




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ラーメン390円。魅力的すぎる。でも自分はもう中高生じゃない。大学生ですらない。なんだろうこの虚無感。



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この鶴でかっ!思わず写真をとってしまった。

こんな風に普段地下鉄でスルーしてしまうところを地上から見てみると思いもよらぬものが見れたりするから結構楽しい。


そんなこんなでいろいろ確認してみたがどうにも記憶が定かでない。謎を抱えて少しモヤモヤしながら先に進むことにする。



道を間違えた。いろいろ見てるうちに交差点でうっかり違う方向に進んでしまった。

さてさて、もう30分も歩いている。そろそろファミマに遭遇できるだろう。そんな期待もむなしく2連続ローソンである。ローソン許さじ。 

はてさて、本当にファミマはあるのだろうか。この先全部ローソンによって制圧されてるんじゃなかろうか。そんな考えが頭をよぎる。

もうすぐいつもの乗り換えの駅が近い。さすがにそこからは電車で帰りたい。果たして肉まんにありつけるのだろうか。


もう駅まで50mというところ。ついにそのときが来た。 




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見えるだろうかこの神々しく輝くファミマが。後光が眩しすぎて写真には写せないぐらい輝いてる。すごい。まさに神の仕様。

ここまで来て完売だったら、もう発狂する。正気を保てる自信がない。


横断歩道を渡り入店する。あの聞きなれた入店音だ。そして肉まんを確認する。

あと一つだ。


レジには既に3人が並んでいる。3人とも肉まんを購入しない確率は統計学上31%という研究結果がある。実際にはセールの影響がありもう少し低いだろう。

緊張の時間が続く。

一人目、クリア。

二人目、クリア。

あとは最後の一人である。ストロングゼロを持っていた。おつまみに肉まんという可能性はゼロではない。緊張が走る。

選ばれたのはスパイスチキンでした。

勝ったのだ。闘いに勝ったのだ。

時は満ちた。

満を持して肉まんを購入する。税込100円。神の仕様。増税なんてぶっ飛ばせ。



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さて、いただこうではないか。
肉まんはアツアツだ。

かぶりつき、幸せを堪能する。うまい。100円でこんな幸せな気分を味わわせてくれるファミマに感謝。

さて、写真を見ればわかるのだが、肉まんは外で食べている。このテーブルファミマの前にある。

つまるところイートアウトである。イートインだと10%とられるから外にしたのなら、素晴らしいセンスだ。

税金どうこう以外にも、肉まんを外で食べて幸せになるという使い方もできる。店の中で食べるのよりずっと良い。


隣のテーブルにサラリーマンらしき人が一人座っていた。少しすると彼女であろう人が迎えに来た。風俗嬢ではない。
たぶんこの人は幸せだろう。


日常の中に幸せはたくさんあるはずだ。なのに悪い方にばかり目を向けるのは少し寂しい。だから僕は独り寂しく肉まんを食しているという事実から目を背けながらおいしい幸せを味わうのだ。